葉夢得『春秋考』十六巻

○永楽大典本

宋の葉夢得の撰。本書は寧宗の開禧年間に『春秋伝』『春秋讞』とともに南剣州で印刷された。元の程端学は『春秋三伝弁疑』を書いたが、そこでも本書の学説を多く引いている。元の当時にはまだ伝本があったのだろう。明朝以来どの蔵書家も本書を〔蔵書目録に〕記載しなくなった。このため朱彝尊の『経義考』には「散佚」とある。しかし『永楽大典』には多くの佚文が引用されている。それらを順次調査したところ、なおも十に八九を発見できた。この度それらを編集し、再び書物としてまとめ上げた。

本書の主旨は三伝排撃の根拠を説明することにあるが、周の法制を判断の根拠としており、少しも憶測を交えていない。随って本書の発言はみな周の典籍を利用しており、それによって春秋の意味するところを明らかにしている。本書の文章は明晰博識、縦横無尽、発言には根拠があり、概ね典雅で精確である。陳振孫の『書録解題』には「本書の分析や討究はきわめて詳細精確である」と言うが、その通りであろう。

原書は冒頭に「統論」があり、その後に十二公を列挙し、条文ごとに詮索を加えている。また経文は記載していない。この度の編集では原書の構成に従ってまとめることにした。ただ本書の巻数については紙数をつづめることとし、「統論」は三巻、隠公以下は十三巻にまとめ直し、『宋史』芸文志に載せる三十巻の巻数にはこだわらなかった。

〔夢得の『伝』『考』『讞』の関係について、〕夢得の自序には「『讞』によって私の三伝批判の正しさを理解してもらえたなら、私の『考』を読んでほしい。『考』によって私の判断の正しさを理解してもらえたなら、私の『伝』を読んでほしい」とある。しかし『書録解題』は、まず『伝』を配し、次に『考』を置き、最後に『讞』を置いている。『伝』は夢得の春秋学の大綱であり、『考』と『讞』はそれを解説したものと思われる。そこでこの度は陳氏の順序に従い、本書を『伝』の後ろに配置した。

『四庫全書総目提要』巻二十七

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