『左伝節文』十五巻

○兵部侍郎紀昀家蔵本

旧本には「宋の欧陽修の編」とある。明の万暦年間の板本である。本書は左氏伝の文章を節略したもので、各篇の冒頭に「敘事」「議論」「詞令」の題目があるほか、「神品」「能品」「真品」「具品」「妙品」や「章法」「句法」「字法」などの標題がある(*1)。本書巻頭には慶暦五年の修の序文がある。しかし序文中に「胡安国の『春秋伝』と真徳秀の『文章正宗』」とあれば、偽作たることを弁別する必要もあるまい(*2)。

『四庫全書総目提要』巻三十



(*1)未詳。杜沢遜『四庫存目標注』(巻6、左伝節文)によると、敘事以下の11題目が並列されているようである。
(*2)欧陽脩は北宋中頃の人で、胡安国は南北両宋の人、真徳秀は南宋後半の人である。「欧陽脩が胡安国や真徳秀の書物を読み得たはずはないので、本書が偽作であるのは明白だ」という意味。

(*) 杜沢遜『四庫存目標注』巻6(265~266頁)によると、本書は明の汪道昆『春秋左伝節文』15巻を指すという。また同書は万暦刊本で、書物の構成も本提要の指摘に合致するが、汪氏の万暦刊本は冒頭に汪氏の序文が附されている。恐らく書店が汪道昆を欧陽脩に、万暦を慶暦に改竄したのだろう。また汪道昆の『節文』は『四庫全書存目叢書』に収録されているが、序文は省略されている、と。

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