朱申『春秋左伝句解』三十五巻

○両淮馬裕家蔵本

元の朱申の撰。申には『周礼句解』があり、既に『四庫全書』に収録している。本書は左氏伝を解釈するだけで、経文を交えていない。恐らく杜預以前の本を用いたのであろう。また同一事件の発端と結末が別々に見える場合は、本文の下に注を付しており、その指摘も詳しい。しかし多々伝文を抄録するのが本書の短所である。例えば隠公篇の冒頭では、恵公はもともと孟子を正妻としていた云々の件(*1)を削っているが、これでは兄弟たる隠公と桓公の因縁が不明になりはしないだろうか。

『四庫全書総目提要』巻三十



(*)本書は現存しており、一般に『春秋左伝詳節句解』の名で通っている。

(*1)恵公は隠公と桓公の父。孟子は恵公の正妻。孟子が死んだので、恵公は宋から妃をもらい、桓公を生んだ。恵公は宋の妃から生まれた桓公を次の魯君にしようと考えたが、桓公幼年の折りに恵公が死んだので、隠公が桓公に代わって魯の君主に即いた。しかし後々隠公が魯君の位を返さないというので、桓公は兄の隠公を暗殺して君主の位に即いた。

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