『春秋図説』無巻数

○浙江呉玉墀家蔵本

撰者の名が記されていない。巻頭に百二十有二の項目が列べてある。本書は始めに十二公の年譜を、終りに諸学者の伝授を、中間に列国の世次・輿地・山川・名号、および経伝所載の名物典故を収め、そのすべてに図説がある。

しかし「年表」は『史記』から取ったもの、「名号帰一図」は馮繼先の撰著を十九図に分けたものである。また歳星・八音・四凶・十六相の諸図は『五経図』(*1)から集めてきたもの、「春秋列国図説」は東坡の『指掌図』(*2)から集めたものである。これ以外にも鄭樵の「考定諸国地名」「敘国邑地同異説」「敘山水同異説」(*3)を列べている。しかしこれら諸図はどれも雑駁で統一性がなく、体系性を備えたものではない。

また本書の巻首に「春秋筆削発微考」を載せる。しかし楊甲の『六経図』にも「春秋筆削発微図」があり、本書と比較しすると全く同じものであった。恐らく甲の書から春秋一巻を取り、雑説を混ぜ、偽ってこの名を用いたのであろう。

巻首には「竹垞」の二字の朱文印がある。ならば朱彝尊の蔵書だったはずなのだが、『経義考』に本書の名はない(*4)。きっと彝尊は後々本書の贋作に気づき、破棄してその名を出さなかったのだろう。そしてその破棄された本が呉氏の手に渡ったのだろう。

『四庫全書総目提要』巻三十



(*)本書は現存する。

(*1)不詳。明朝に『五経図』なる書物がある。もし明朝の『五経図』のことであれば、必然的に本書の著述年限も元朝には遡らない。
(*2)『指掌図』は蘇軾の著作とされていたもので、地理の沿革を記したもの。ただし偽作である。
(*3)不詳。
(*4)『経義考』は朱彝尊の著書で、経学に関する歴代学者の書目と関係文書を網羅的に集めたものである。

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