書家藏秦山集後

秦山集四十九卷、與序目合緘、二十三册、先大人終身自所集録而手澤猶新也。末梢將鏤于櫻以傳諸無窮、宿志未遂、奄忽即世。兒不肖不能述其事、姑裝束之、期異日成功。文字改削、在格内者、不及淨寫、或出於總格之外者、亦反折其紙、依舊存之、但於遺文、則不得已補入焉。蓋先大人筆跡、雖片言隻字、不可復得、以故尊崇愛護之餘、不忍損敗之、藏以為貽厥家珍、且備後世子孫好學者之軌範云爾。

享保十三年戊申三月中澣

嗣子谷丹四郎垣守謹識


家藏秦山集の後に書す

秦山集四十九卷、序目と合緘して二十三册、先大人終身自ら集録したまふ所にして手澤猶新たなり。末梢將に櫻に鏤して以て諸を無窮に傳へんとするも、宿志未だ遂げず、奄忽として世に即きたまふ。兒不肖、未だ其の事を述ぶること能はず、姑く之を裝束し、異日の成功を期す。文字の改削、格内に在る者は淨寫に及ばず、或ひは總格の外に出ずる者も亦其の紙を反折し、舊に依りて之を存し、但だ遺文に於いては則ち已むを得ず補入す。蓋し先大人の筆跡、片言隻字と雖も復たは得べからず、故を以て尊崇愛護の餘、之を損敗するに忍びず、藏めて以て貽厥の家珍と為し、且つ後世子孫の學を好む者の軌範に備ふとしか云ふのみ。

享保十三年戊申三月中澣

嗣子谷丹四郎垣守謹識

inserted by FC2 system