宋代地名辞典

凡例

  • 『宋史』地理志をもとに宋代の路府州軍監の地名、および郡・節度の名称をATOK用の辞典として登録したもので、宋代の地名すべてを網羅するものではない。
  • 宋代地理の正確な辞典を目指したものではないので、『宋史』地理志に対する補正や『元豊九地志』等の補助資料からの登録・補正は行わなかった。
  • 原則として新旧両字体で登録した。ただし新旧両字体が存在する地名で、日本語環境(MS明朝など)で表記の歪む文字については、旧字体での登録を見送った場合がある。
  • 県の登録は見送った。
  • 東西両京内部の地理は登録しなかった。
  • 二文字の府州軍は二文字と州軍つきのものと二種類登録した。一字の州は某州の形でなければ変換できない。例えば、臨江軍は臨江と臨江軍の二つで登録しているが、登州は登では登録していない。
  • 郡や節度は「郡」「軍」「節度」を省略した名称で登録した。例えば、鎭東軍節度の場合、「鎭東」で登録しており、「鎭東軍」「鎭東節度」「鎭東軍節度」では登録していない。
  • ATOKのコメント機能を利用した。コメントについては後文を参照のこと。
  • 他の時代でもある程度は利用可能だが、府州軍監の名称及び変遷に異同が多く、またコメントが邪魔になるのでお薦めできない。

注意事項(コメントの見方)

本辞典に登録された地名を変換すると、多くの場合コメントが附される。例えば「ちんとう」を変換すると、鎭東・鎮洮・鎮東・鎭洮の四つの候補が挙がり、各々「節度。煕河煕州」「節度。両浙越州」などのコメントが附される。これは本来ならば鎭東・鎭東軍節度・鎭東節度などの名称で登録すべきところを、登録文字数を抑えるために行った便宜的な処置である。

コメントには三種類ある。一つは府・州・軍・監・郡・節度などの該当地名がどの区分に属するかを示したもの、もう一つは該当地名がどの路に属するかを示したもの、もう一つが該当地名の変遷を示したものである。この内、府・州・軍・監については路の所属地を記し、また該当地名が変遷する場合はそれも記した。一方、郡と節度については、所属路と関係府州の名称を記すのみで、関係府州の変遷は省略した。

例えば、「越州」の場合、「両浙路。→紹興府」とコメントが出る。これは越州が両浙路に所属し、後に紹興府に名称変更のあったことを意味する。越州のように二字の州名の場合は、府州軍などの区分は不要なのでコメントに表記されない。一方、「臨江軍」を「りんこう」で変換すると、「軍。江南西路」とコメントされる。これは「臨江」は「軍」の区分にあり、江南西路に所属することを示す。

これに対して、先ほどの「鎭東」などは節度名なので、「節度。両浙越州」とコメントされ、越州が紹興府に名称変更されたことなどはコメントされない。また節度名は決して「軍」とコメントされない。「軍」と出た場合は全て臨江軍などの軍である。なお郡と節度のコメントに見える路名は、江南西路が江西と記されるなど、省略型が多いので注意されたい。

地名の変遷については、コメントに「→」と表示される。例えば越州では「→紹興府」とコメントされるが、これは越州から紹興府に変ったことを意味する。逆に紹興府では「越州→」と表示されるが、これは紹興府は越州から変ったことを意味する。

またまれに「/」とコメントされる場合がある。これは「/」の前後で無関係の地名であることを示す。例えば、臨江(りんこう)を変換した場合、「軍。江南西路/郡。広西龔州」とコメントされる。これは「臨江」には、(1)臨江は江南西路に所属する臨江軍と、(2)広西路の龔州の郡名との二つがあることを示している。同一文字の同一地名を二つの単語に分けて登録することができなかったので、便宜上一つの地名に併せ登録したものである。

なお文字によってはコメント覧に「機種依存文字」と出る場合があるが、これはATOKのコメントなので本辞典とは無関係のものである。

最後に、当然ながら各府州の所属路や地名の変遷はある程度の目安に過ぎず、それほど正確なものではない。例えば西夏との抗争の続いた北宋西北部は、『宋史』地理志では秦鳳路として一括されているが、本辞典では煕河路・秦鳳路・環慶路・涇原路・鄜延路の五つに分類した。この外、領土の拡張や縮小によって当然ながら路名の変更も生れたが、原則としてそれらは記していない。

基本を『宋史』地理志に置いているので、『元豊九域志』とも異同があり、南宋の地理とも相違が大きい。それらを全てコメントに残すことは製作者の力に余ることであり、また辞典の本分を越えるものなので、コメントはある程度のものでしかないと思って頂きたい。

底本及び参考文献

  • 『宋史』地理志(中華書局)

備考

  • 「ATOK」は(株)ジャストシステムの商品です。
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