胡元質『左氏摘奇』十二巻

○『宛委別蔵』所収

宋の胡元質の撰。元質、字は長文、呉郡の人。給事中になった。『宋史』芸文志によると、史部に於いて『西漢字類』を「胡元質の撰」と記しながら、経部春秋類に於いて『左氏摘奇』十二巻を「撰者不詳」としている。印刷された当時に〔撰者の名が〕消されたのであろうか。陳振孫の『直斎書録解題』は本書に対してやや詳しい解説を残している。それによると姓名・爵録や郷里はこの本と一致する。この本は呉郡の蔵書家の影宋本を鈔録したものである。書末に元質の自記が一条あり、「『左氏摘奇』はすべて自らまとめたもので、当涂道院にて刊行し、同好の士と共にするものである。乾道己巳元日に書す」とある。原刊本にあったものであろう。本書は経文と伝文の一二句を摘録したものだが、杜預の『集解』も必ず収めている。選択の厳密なことに関しては林鉞の『漢雋』や蘇易簡の『文選双字類要』よりも優れいる。『宋史』芸文志が経部に分類したのも間違いではなく、むしろ『文献通考』が類書に分類したのは本書の真価を理解したものではない。

『揅経室外集』巻一(四庫未収書提要)

inserted by FC2 system