宋代職官辞典

凡例

  • 『宋史』職官志に見える官職の一部を気ままに集めてATOK用の辞典として登録したものである。
  • 官職名の外、隣接する諸概念を登録したが、登録数はごく僅かである。
  • 原則として新旧両字体で登録したが、旧字体でのみ登録したものも一部に存在する。(例)辧など。
  • 日本語環境で表示(MS明朝など)の歪むもの、あるいは表記の困難なものは新字体で登録した。(例)「黄」「平」など。
  • 製作者本人がいうのもなんだが、予想以上に使えない辞典なので、利用する場合はそのことを念頭において使ってもらいたい。
  • (補足)利用できる部分があるとすれば、同中書門下平章事とか観文殿大学士などの、政府高官でしかも官職名に異同の少ないものくらいだと想像している。
  • (補足)込み入った官職名はほとんど変換不能なので、自分の利用語彙を適当に打ち出してみて、利用できそうなら使ってもらいたい。
  • (補足)南宋史料に頻出する地方官の肩書や胥吏の肩書はほとんど登録していない。理由は彼らの肩書きには変動や略称が多く、全てを登録するのはほぼ不可能だから。

言い訳

姉妹編の地名辞典と人名辞典の完成度も低いが、この辞典は完成度とかいう以前にほとんど役に立たないであろうことを、あらかじめ告白しておく。そんなものを公開するなと言われそうだが、折角作ったのでという人情に押されて、他の辞典とセットで公開することになったわけである。

ただ作る前はそれなりに利便性を考えていた。宋代の史料を扱う場合、職官・食貨・選挙・兵・礼楽などの諸分野には特殊な概念が多く、実際に史料を操作したり論文を書く段になると、それら専門用語の漢字を一々個別にタイプするか、パレットで呼び出す必要があり、非常に精力を殺がれるものがあった。私はいらいらが嫌いなので、それを一挙に解消すべく、当然のように辞典の製作を思い立った。しかし如何せん自分の専門外のこととなると語彙の収集が難しく、収集したところで異常に膨大なものになる。ここにやむを得ずどんな分野にも必要で且つタイプのめんどくさい、人名・地名・官職の辞典と一般用語辞典を作ることにした。今から七~八年前(だったか?)、まだwin98が中心だったころに製作を開始し、すぐに失敗したことに気付いた。

当時同時に作った地名辞典と人名辞典には二つの欠点があった。一つは当時のPC環境では第三水準以上の漢字の登録が難しく、しかも中国の固有名詞には第三水準以上を必要とする部分が多かったので、勢いあまり役に立たない辞典になってしまったのである。これについては現在では無意味な悩みになった。もう一つは宋代の地名や人名といってもきりがなく、どこかで範圍を区切る必要が生まれるのだが、その句切りに失敗したことである。現在公開している両辞典(特に人名辞典)には事実上不必要な語彙が多く登録されており、無意味に辞書が重くなってしまった。これは不要なものを削ればいいだけなのだが、ここでも私の知らない部分については有名無名の判断が難しく、結局一律に登録することになったのである。

しかし地名や地理は、不足であっても、役に立つところもあると思い直したが、残りの職官と一般用語には別の問題が生じた。そもそも職官の中、例えば侍郎だとか左丞だとかは固定された名称で、この点、地名や人名と同じだといえる。しかし現実に使われる官職名は、一部高級官僚のものを除いて、もっと融通無碍に利用される。一つ開封尹にしたところで、史料には開封府尹とか開封尹などと登場するわけではなく、尹が動詞として用いられる場合も珍しくない。よほど有名な高級ポストでもない限り、つまり一般の士大夫とセットで登場する官職名は、固定した名詞表現として登録しても意味がないのである。ましてやこれが一般用語となると、単に名詞で登録してもほとんど意味はなく、その多くは動詞として登録する必要がある。例えば「擬注」はよく利用する概念だが、「擬注」と名詞で登録しても、実際に文字をタイプするときには不便で仕方がない。せめて動詞でも登録されていないと、スムーズなタイプを妨げるばかりである。

結果、不出来な職官辞典と一般用語を組み足して、新たに職官辞典として公開することにした。一般用語の方は語彙数も少なく、職官とセットの方が辞書数も少なくなっていいだろうと思ってのことである。ただし以上のような理由で、有用な部分はごく限られたものになっている。作った本人はどの程度の術語を登録しているか分るものだから、まだそれなりに役にも立つが、第三者が使った場合どうなるか見当も付かない。そんなわけなので、使ってみようと思う人だけ使ってみていただきたい。

そうそう、いつからそうなったのか知らないが、ATOK2008で動詞の単語登録をする場合、古代文法の活用型で登録できるようになっていた。恐らく変換型に文言モードが選択できるようになってからだと思うが、漢文チックで古風な熟語の登録には便利になった。もともと現代用語でも古代文法を使いたい場合があったので、ありがたい機能である。ありがとうATOK!ありがとうジャストシステム!

底本及び参考文献

  • 『宋史』職官志(中華書局)
  • 梅原郁『宋代官僚制度研究』(同朋舎出版,1985年)
  • 中嶋敏編『宋史選擧志譯註(三)』(東洋文庫,2000年)

下二書は適宜参考にした外、索引から一部の用語を集めたが、両書から網羅的に語彙を集めたわけではないので誤解なきようお願いしたい。

備考

  • 「ATOK」は(株)ジャストシステムの商品です。
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