『宋史紀事本末』翻訳凡例

諸注意

本訳は宋代の歴史を正しく伝えるためになされるものではない。原本は現在から数百年前の特定の人物の宋代理解であり、本訳がこれをどれほど正確に日本語に移しても、あるいはそれが正確であればあるほど、現在の日本における宋代理解と乖離する。随って、訳者が原本の過誤を理解し、訳文の読者がその誤りを踏襲することが明白であっても、一切注記は加えていない。本訳で原本の考訂を行う場合は、『宋史紀事本末』の依拠した、あるいは依拠したものが依拠したと考えられる諸文献との文字上の異同に限られる。

凡例

  • 正文は『宋史紀事本末』(中華書局、1977年。以下、中華書局本と略称)を用いた。ただし固有名詞などの文字に限り、他本によって考訂した。
  • 中華書局本の109巻を改訂して28巻とした。
  • 年月日の誤記は『宋史』などを用いて直ちに改訂した。
  • 訳文中の〔 〕は訳者または他書による増補を、( )は訳者の注を指す。
  • (01)などの番号は『續資治通鑑綱目』(以下、続綱目と略称)を参考に振ったものである。原則として『続綱目』の綱目部分に番号を振り、割注以下の文章は改行して訳出した。綱目部分が引用されず、割注以下の文章のみの場合は、割注以下の部分に直接番号を振った。
  • 109巻本及び28巻本又は中華書局本に存在しない改行は、『続綱目』『宋史』又は訳者の判断で適宜加えたものである。
  • 中華書局本に考訂のある部分は、単純な名詞の改正の場合であり、かつ正当と思われる場合は直ちにそれにより、文脈の変更を来す場合は注を加えた。
  • 中華書局本に存在する増補(年月日を除く)には、注を加えた。
  • 原文の不体裁により訳語を統一できない文字(王師・宋師など)は、客観的表現に書き換えた。この種の改訂は外交関係の記事に頻出する。
  • 文書行政に関わる文字の訳語は統一せず、文脈によって適宜文字を変えた。(上奏、上疏、上表、上申など)
  • 引用の表式である曰、言、謂、論などは直訳せず、文脈によって非難および是認の意味を込めて訳出した。
  • 本文の解釈には『宋史』『續資治通鑑長編』等の外、各人の文集等を利用した。ただし訳文は原則として『宋史紀事本末』の解釈に従い、意味の疎通に不便のある場合のみ他書によって改訂した。文脈に大幅な異同がない限り、改訂の注記は省略した。
  • 『宋史紀事本末』が『宋史』その他の史料を明らかに誤解している場合、改訂はせず、また原則としてその旨を注記することもしなかった。この場合、本文を正確に理解すれば、誤った理解に達することになる。

主要利用史料

  • 『新五代史』(中華書局)
  • 『舊五代史』(中華書局)
  • 『宋史』(中華書局)
  • 『續資治通鑑長編』(中華書局。校点本。第2版)
  • 『宋會要輯稿』(中華書局)
  • 『宋大詔令集』(中華書局)
  • 『宋朝諸臣奏議』(上海古籍出版社、1999年)
  • 商輅等奉敕撰『續資治通鑑綱目』
  • 薛應旂『宋元通鑑』
  • 王宗沐『宋元資治通鑑』
  • 『御批續資治通鑑綱目』(『四庫全書薈要』所収)
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